FM高知 Hi-Six Morning Click! 「聞かせて高知県」
RKC高知放送 ワローのごきげんワイド 「ラジオ県庁ナビ」

2012年12月放送
ラジオ番組内容(原稿)
 
【早産防止対策の推進について】
(アナ)今日は、今県内で課題となっています早産の増加とその対策について、高知県健康対策課長で医師・医学博士の福永さんにお聞きします。
まずはじめに、出生時の体重が小さな赤ちゃんの状況について、お伺いしたいと思います。

高知県健康対策課 以下・で略)
・出生時の体重が、2,500グラム未満の小さな赤ちゃんのことを、低出生体重児といいます。全国では、出生した赤ちゃんの中の9%程度が低出生体重児ですが、高知県では10%を超える状態が続いており、全国より高い割合となっています。
・また、1,500グラム未満の赤ちゃんを、極低出生体重児といい、多くの場合は、呼吸が不安定で出生直後から十分な医療が必要になります。さらに、1,000グラム未満の赤ちゃんを、超低出生体重児といいますが、妊娠20週台で生まれた赤ちゃんで、非常に手厚い医療が長期間にわたって必要となります。
・この1年、高知県では手厚い医療が必要な超低出生体重児が多く生まれ、県内に18床ある新生児集中治療管理室(NICU)は満床の状態が続いています。
・この小さな赤ちゃんは、時には、お母さんのおなかの中での発育が悪い場合もありますが、大部分が早産によるものです。
・このため、早産を予防することが大切になってきます。

(アナ)早産が生まれてくる赤ちゃんの状態に大きく関係するということですが、早産の原因にはどのようなことがありますか。

・全国的な傾向として、この10年間で低出生体重児の割合が増えています。一つの原因として、お産をする年齢が高くなっていることが言われています。
・統計的には、25歳から29歳の間が、身体的にはお産に最も安定した年齢といわれていますが、お産をする年齢の平均は、全国でも、高知県でも30歳を超えています。高知県内でも市部と郡部では差があり、市部ではお産をする平均年齢がさらに高い傾向にあります。
・そのほかの原因として、早産になりやすい体質のお母さんがいらっしゃいます。たとえば、胎児がいる子宮の入口の頸管というところは、妊娠中はしっかり閉じているのですが、時に開きやすくなっている妊婦さんもいて、十分に胎児を子宮内に保てない状態になって、早産になってしまう場合があります。
・また、早産の原因の一つとして、胎児を包んでいる膜の炎症、これを絨毛膜羊膜炎といいますが、これは膣内の細菌の感染が子宮の胎児を包んでいる膜まで拡がっていくことによるものです。しばしば妊娠20週台での早産の原因となるため、感染の予防や早期発見が重要です。

(アナ)早産を防ぐために、どのようなことに気をつけたらいいのでしょうか。

・まず、妊娠した可能性があれば早めに産婦人科を受診していただき、妊娠が判明したら、速やかに市町村役場に妊娠の届出をお願いします。妊娠の届出をすると、母子健康手帳と、妊婦健診の受診券が交付されます。また、届け出の際には、是非、役場の保健師さんとの面談をお願いしてください。日常生活の注意点や、健診の受け方など、必要な知識を個人個人にあわせて教えていただけます。
・また、市町村や医療機関では母親学級を行っています。妊娠出産の知識を得るいい機会ですので、できるだけ積極的なご参加をお願いします。
・早産の引き金となったり、胎児の発育を遅らせる原因として、過度なダイエットや喫煙、飲酒の問題が大きく取り上げられています。妊娠したら禁煙し、飲酒も我慢しましょう。

(アナ)アナ)タバコの影響は大きいのですか

・若い女性の喫煙率が高くなってきていますが、喫煙の影響はかなり大きく、胎児を常に酸欠状態にしてしまいますし、タバコから体内に取り込まれたいろいろな化学物質が発育に影響します。

(アナ)ほかにはどのようなことに注意が必要ですか。

・生活上の注意としては、一般的な注意でもある規則正しい生活を保つこと、過労を防ぐこと、ストレスをためないこと、清潔を保つことが大切です。
・また、歯周病があると、子宮を収縮させる物質が体内に分泌されて、早産の原因となることが言われています。妊娠の早い時期に一度歯科に受診し、歯科健診を受けるとともに、口の中を清潔に保つように心がけましょう。

(アナ)さまざまなことが関係してくるのですね。

・そうですね。ただ、妊娠は自然な現象であり、病気ではありません。健康的な生活に心がけていただくことが重要であるといえます。
・県と産婦人科や歯科の先生方とともに作りました「お母さんと赤ちゃんのためのサポートブック」には、妊娠中や産後の注意点について詳しく書かれています。母子健康手帳の別冊として妊娠届をしたときに配布されますので、必ずお読みください。また、この冊子の中に「妊娠リスクスコア自己採点表」があります。これは早産の可能性のある項目について、情報を把握するためのもので、これをつけることでご自身の状態を把握して、妊婦健診のときに医師や助産師にお見せいただければと思います。

(アナ)早産の徴候を早く見つけるためにはどうしたらよいでしょうか

・早産の徴候は、定期的な妊婦健診を受けていただいたり、おなかに異常を感じた時に速やかに早期受診していただければ、早期のうちに発見できるのですが、妊婦健診を受けない、あるいは都合でなかなか受けられない、異常を感じても自己判断して受診しなかったり、忙しくてなかなか受診できなかったりすると、進行した状態で発見され、結果的に早産を食い止めることができない場合も多くなります。
・従って、妊婦健診をきちんと受けていただくことが大切です。標準的な妊婦健診は、無料で14回受けられますので、定期的に受診して、不規則にならないにしましょう。また、おなかのはりなど、異常を感じた時は、そのまま様子をみるのではなく、早めに受診することが大切です。ご自身の症状に不安がある場合は、受診している病院・診療所の助産師などのスタッフに電話などで相談されるとよいと思います。また、市町村役場・福祉保健所でも相談が可能です。

(アナ)妊婦健診では、新しい取り組みが行われていると聞きましたが

・妊婦健診では、全県下で、早産の可能性のある状態を早期に発見するために超音波検査による「子宮頸管長測定」の検査を9月から始めています。これは、先ほどお話しした、胎児がいる子宮の頸管の長さを測定します。この長さが正常より短くなった場合、そのままですと子宮の入り口がだんだん開いてきて、十分に胎児を子宮内に保てず、早産になる可能性がありますが、早期にその徴候を発見することによって、早産を未然に防いでいくためのものです。

(アナ)早産の原因の一つとして、子宮内の胎児を包んでいる膜の炎症というお話がありましたが、こちらについても妊婦健診ではなにか取り組みがあるのでしょうか

・これは絨毛膜羊膜炎といわれるものですが、この炎症は破水を起こして早産の直接の引き金となります。膣内で病原性のある細菌が繁殖して炎症を起こし、その炎症が拡がって起きますので、普段から局所の清潔を保ち、過労やストレスを避けることが大切になります。県では、膣内の細菌感染を早期に発見し、対処するために、来年度から、妊婦健診のときに、膣内の細菌検査を行う方向で現在準備をしています。

(アナ)これまでは、妊婦さんがご自身で管理していただくことについて詳しくお聞きしてきましたが、妊婦さんが健診を受けたくても、仕事が休めないといったお話も耳にします。

・妊婦さんが妊婦健診を受けたり、母親学級を受講したり、異常を感じた時に早期に受診していただくには、周りの方々の協力がぜひ必要です。
・仕事をたびたび休むことが難しく、健診の回数が減ってしまったというお話をよく聞きますが、男女雇用機会均等法では、女性労働者が妊婦健診を受けるために必要な時間を確保することが事業主に義務付けられています。
・また、医師から女性労働者への指示事項を事業主に知らせるため、「母性健康管理指導事項連絡カード」という連絡票がありますので、積極的に活用しましょう。

(アナ)家庭ではどのようなことに気をつけたらよいでしょうか。

・家庭の中では、妊婦さんが健康的な生活が送られ、定期的に妊婦健診が受けられるような配慮が求められます。ことに精神的なストレスが妊婦さん一人にかからないよう、家族のみんなで役割を分担するなど工夫が求められます。また、受動喫煙を防ぐために、妊婦さんがいるところでは喫煙しないというような配慮も必要です。これはお子さんが生まれた後も同じですので、妊娠中から習慣をつけましょう。
・上のお子さんがいて子育て中なら、子育ては家族みんなで分担しましょう。
・いいきっかけですので、妊娠出産は女性の問題、というのではなく、家族みんなで勉強して見られるのもよいかと思います。


(アナ)最後に県民の方々に対するメッセージをお願いします

・妊娠出産は、女性にとっても、家族にとってもそして地域にとっても一大イベントであると思います。妊婦さん、産婦さんにやさしい高知県をめざして、県民のお一人お一人が、日々できることに取り組んでいただけることを願っています。