広報たどつ 10年3月号 みんなで考えようエイズを(6)

   今回はエイズ教育や性教育に必要とされる社会の援助について
  性に関するトラブルを防ぐためには何が必要かという点を中心
  に、私の経験から述べてみたいと思います。
 
  エイズや性感染症の予防、避妊といった話しなりますと、ついつい
 医学的な面とか予防の技術ばかりに目をとられて、その土台にある
 いろいろなことがらを忘れてしまいがちになります。
  
  保健所では、エイズや性に関する相談をお受けしています。
 そこで多くのエイズに関する相談事や、性に関する困りごとは、
 単に個人が予防できなかったという、「失敗」という範囲を超えて
 いるのが現状です。
  私は仕事柄、エイズや性のトラブルに関する相談をかれこれ
 百回以上お受けしておりますが、これらの相談に共通したこと
 と して、エイズや性に関する病気の心配や、望まない妊娠など
 を未然に防ぐ行動がとれなかったのは、「知らなかったため」
 あるいは「知っていても関心が呼び起こされず、自分のものと
 して結びついていなかったため」という場合があります。
 これらは、自分が当事者になるということを知らなかった
 ためおこっているわけです。そしてもう一つは「予防が必要
 とは思っていても、行動ができなかったため」という場合が
 ありこれは、多くは性パートナーとの人間関係など、自分
 ひとりでは限界のあることがらによっておこっています。これ
 らの相談事は、いずれも悩み困ったあげくに相談にこられて
 いるのが現状です。
 
 これらの困りごとは、単に個人の問題、個人としての責任
としては片づけられないたくさんの事がらが関係しています。    
性に対する情報はいろいろなものが氾濫しています。たとえば
週刊誌をめくればたくさんの性情報がありますが、その中には
正しくない知識や、営利目的のために都合よくゆがめられた
情報、性に対する偏見に基づく情報もたくさんあります。
エイズや性の相談には、このような情報に振り回されて、
その結果、悩み、苦しんでいる人たちがたくさん来られます。
ことに、「予防が必要とは思っていても、行動できなかった」
という失敗は、女性が男性の偏見に基づく言動に振り回され
自分で自分を守ることができなかったという場合が多く含ま
れています。性に関するトラブルは、こういった女性に対
する偏見や男女平等に基づくものも少なくありませんが、
それらは間違った情報が作り上げてしまったものとも
言えます。
 現実問題として、思春期にある子ども達は、それらの性に
まつわる情報を好むと好まざるとにかかわらず目にしてゆく
ことになるのですが、その情報がきちんとしたものなのかを
判断し、自分の行動を自分で決めることができなければ、
エイズや性の病気を予防したり、望まない妊娠を避けることは
できません。これには、科学的に正しいとされる知識を
きちんと伝達することや、考える週間を身に付けること、
自分のことを他人任せにしないで自分で決められること、
やさしさや思いやりをはぐくむこと、自分の思っている
ことをちゃんと表現し、相手に伝える力を養うことなどが
必要になります。それには、学校と家庭が協力し、エイズや
性について真正面からじっくり話ができる社会をみんなで
作ってゆくことが重要です。
 エイズ教育に対する理解を深めてゆくには、住民の
みなさんの援助が必要不可欠です。今後ともエイズ教育
へのご理解とご支援をお願いします。
(町エイズ教育推進委員会委員丸亀保健所 福永一郎)

(広報たどつ より)
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