広報たどつ 10年3月号 みんなで考えようエイズを(7)
感染症とは、病原体があってそれがうつって起こる病気です。HIV感染症
とは、エイズウイルスによって引き起こされる感染症で、重症になると
「エイズ」と呼ばれる状態になるものです。
病気が移るためには1,感染源2,感染経路3,感受性者という全てが
必要です。このどれか一つが欠けても、病気はうつらないものです。
「感染源」とは、病原体を十分な量含む「もの」をいいます。HIV感染症
の場合は、HIV(エイズウイルス)を含む血液、精液、膣分泌液、母乳です。
感染源がないところから病気がうつることはないので、一緒に風呂に入った
り、トイレを使ったり、鍋をつついたりしても感染は成立しません。また
「消毒」すれば病原体が死にますから、感染源にならないことになります。
「感染経路」とは、感染源が新たにうつる人(感受性者)にゆくまで
の経路をいいます。これには、病気によって違い、接触による感染、
飛沫感染(いわゆる空気感染)などがあります。HIV感染症の場合は
感染源(病原体を十分な量含む「もの」)が直接接触して血管内に
はいる「接触感染」の経路のみで、他はありません。性交によって
粘膜が破れて、精液や膣分泌液に含まれている病原体が粘膜の
破れたところから血管の中に入る、覚醒剤のまわし打ちをしていて
ウイルスに汚染された血液が直接血管の中に入る、といったことが感染
経路になります。
つまり、感染経路対策は「感染源(ウイルスの含まれる血液、精液
膣分泌液)に直接接触しない」ということになります。性感染での
予防では、コンドームを使えば、感染源(精液、膣分泌液)はゴム
の膜にさえぎられて、直接接触することはありませんから、有効な
予防法ということになります。空気感染ではうつらないので、普段の
生活では感染する機会はないと言えます。
「感受性者」とは、新たに感染を受ける人の、からだの抵抗力(免疫
力)のことです。代表的な対策は、ワクチンで、たとえば、はしかの
ワクチンを接種された人は、はしかに対して「免疫」があり、感受性者
にならないので感染が成立しない、と言えます。現在HIV(エイズの
ウイルス)に対するワクチンは開発中で、近い将来実用化される可能性
があります。
以上がエイズの医学的な知識ですが、実際にエイズを予防するには
ただ単に医学的な知識を知るだけではなく、実際にエイズに対して
行動ができることが必要です。それには、一人ひとりが知識を身につけ
るだけではなく、みんなでエイズや性についてきちんと考える社会を
作ってゆく必要があります。今後ともエイズ教育へのご理解とご支援
をよろしくお願いします。
町エイズ教育推進委員会委員
丸亀保健所医師 福永一郎
(広報たどつ より)
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