< 小学校PTA 性教育関係講演 >



 1996年11月に,ある小学校の低学年PTAを対象に行った講演の要旨です。

来ているのは女性ばかりで(保護者),おおむねは私と同世代なのですが,真剣

な雰囲気で,なかなかよい感触でした。

(禁引用・転載)

Copyright (C) 福永一郎 1997







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1.思春期から青年期にかけて何が起こっているか



1)知識がない

 男女とも、性感染症はおろか、月経や妊娠についてもきちんとした知識を持っ

ていない

知識を持っていないということは、知識を与えていないということである



2)自分のことを相手にきめてもらう

 女性の性行動の多くは、主導権を自分で持っていない

 性に関して自己主張ができない(自己主張すると嫌われる)



3)コンドームをめぐる問題点

 必要なときにコンドームが買えない

 買い方や正しいつけかたを知らない

 女性側からコンドームを言い出せない



4)性に関する知識はどこで得ているか

 男性は、アダルトビデオ、雑誌の広告などの商業メディアが多い。

 (そこでどんな取りあげられ方がしているかを知っておく必要がある)

  →商業メディアは「売れれば良い」メディアである

 日本は、排泄の性に対して肯定的な社会である



5)性に関する意識が違う

 10代から20代にかけては男性は「排泄の性」、女性は「感性の性」である

「排泄の性」や「感性の性」から「歓びの性」に脱皮するには相互理解のための

時間が必要である



6)人工妊娠中絶は30代女性に多い

 そして思春期、青年期をすぎて中年に至るとどうなるか。

 中絶といえば10代の未婚者がよく取りあげられるが、実際は分別のわかって

いるはずの30代女性が多い。医学的に母体に影響があるという場合もあるが、

多くは、夫婦間で「性の話」ができないなど、夫婦間での性に関する問題がある

と思われる。日常的に何年もセックスをしているのに、性に関して相互理解がで

きていないというわけである。



7)まとめ

 結局、結果に責任をもてないセックスをしてきており、それが結局は家庭の場

で子々孫々に伝えられてくるということになる。



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2.小学生低学年での重要なポイント



1)性観念、性役割を植え付けない

 生物的な性をセックスといい、精神的な性は、ジェンダーという

 東京都の小学生高学年対象の調査などによると、男児では自分の性に肯定的だ

が、女児では否定的な考えを持っている割合が少なくない。

 持って生まれた性格とか、生まれた後の社会との関わりで、いろんな性(ジェ

ンダー)に関する自分の位置づけができてくる。それが結果的に男の子らしいと

か女の子らしいということになるのであって、それは生物学的な性(セックス)

によるものではない。たとえば、女の子らしい遊びとか男の子らしい遊びと言う

のは自然に体得される結果であって、はじめからそういう遊びだけを教えるわけ

ではない。

 家庭教育で「男の子らしく」、「女の子らしく」を押しつけることは望ましく

ない。



○ このためには、父親が、育児家事を子どもの目の前でやるとか、家事や遊び

も男児女児に関わらず同じように扱うことなども必要になる。ただし、家庭内だ

けでは難しい点があって、平等意識、就労面など超えるべきハードルが多い。



2)家庭機能について理解させる

 協働によって家庭は機能しているということを、日々の実践の中で理解させる



3)性をいやらしいものとして植え付けない

 いやらしいものとして植え付けられると、近い将来には、結局、性を理解しな

いままに性行動を行うことになる。

 性についての質問は、ある程度きちんと応対することが必要である



○ 用語の使用に注意

 正しい用語を使うべきである。言い替え言葉、ごまかし言葉、差別用語は、結

局、恥ずかしいもの、忌むべきものとして植え付けられ、さらに無用な誤解を生

むこともある。



4)性被害への対処方法

 知らない人についてゆかないように教育する。



5)結局、今の時期に重要なこと

 将来、性についてきちんと考えることができるような、判断力、自己決定力を

身につけるような教育をすることである。

 自分のことは自分でおこなって、自分で責任をとる(人任せにしない、人は責

任をとってくれない)ということと、きちんと自己主張することが、結局性につ

いても重要なことになる。



 このあたりがすでにうまくできつつある、あるいはこれからでもうまくできる

自信があれば、生命の大切さを具体的に教えてゆけばよいと思う(生命の大切さ

のところでは、妊娠・出産ははずせないと思います)。教材として、絵本やマン

ガなどもあるので、さりげなく与えるという方法もある。ただし、与える前にち

ゃんとよんで、質問されたときの受け答えを考えておくことが必要。

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附)医学的な部分の各論



 今の段階までに自宅でやっておくとよいこと



○ 外性器の観察

 自分の外性器を鏡などを使って観察させ、大切なものであることを確認させる。

 これをやっておかないと以下の二つはできない。



○ 排泄に関する注意など

 女児では、尿道や膣と肛門が近いため、これらが便で汚染されやすく、膀胱炎

などを起こしやすい。また、陰唇に垢がたまりやすく不潔になりやすい。

 お尻のふき方(前から後ろ)や、お風呂での洗い方をきちんと手とり足とり教

える(普通に洗えば良く、あまりごしごし洗いすぎるのはかえっていけない)。



○ 亀頭包皮の翻転

 日本人男性の大部分は、包茎である。

 包茎は病気ではないし、セックスの際は翻転するので、原則として手術も不要

である。

 お風呂にはいるときに包皮を翻転(皮をめくる)させて、垢を良く洗う習慣を

つけさせる。当分は、ときどき皮むきの状況を目で確認する。

 (最初は垢がこびりついており、むくのに痛くて時間がかかるので、まず親の

手でお風呂で何日かかけて少しづつむいてやる。本来は幼児期までにした方がよ

い。どうしても翻転できなければ泌尿器科へ行って処置してもらう)

 包皮を翻転させ、良く洗う癖をつけておけば、将来的な支障(身体的、精神的

ともに)はまったくない。



 なお、これらは、どちらかと言うと、同性の親がやる方がよいようである。



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(おしまい)