保健所での小児肥満教室での講演資料です(禁引用・転載)



(わたし自身が小児肥満でしたので説得力があるかな??)

Copyright (C) 福永一郎 1994







                 平成6年8月11日(小児肥満教室講演)



小児肥満について




                香川県観音寺保健所(当時) 福永 一郎



1)肥満には次の2つのタイプがあります。



 肥満は脂肪を蓄えている「脂肪細胞」が増えるか肥大するかによっておこる。



 細胞の数が増えるタイプ・・・小児(特に乳児期)からの肥満のタイプ

  (親がつくる肥満)    「思春期までの肥満」はこれである

               一旦増えた細胞自体は減らないので,治りにくい



 細胞が肥大するタイプ・・・・成人になってからの肥満

    (自分でつくる肥満)      いわゆる「中年ぶとり」のタイプ

               細胞がやせればやせられる



2)肥満の原因としては以下のようなことが考えられているが,基本的にはエネル

 ギーの出し入れが合わず,入れる方が多いためにおこる。



(1)遺伝(ふとりやすい体質)

 同じだけ食べても,その分が身体の活動に利用されやすい人と,脂肪として蓄え

 やすい人がいる。



(2)食べる量(エネルギー)の方が使う量よりも多い

 一日50kcal余分にとり続けると,1年では2kgの体重増加になります。



(3)食事パターン

 一回多食はふとりやすい(エネルギーをため込む方の活性が高くなる)



 肥満は夜つくられる(エネルギーは昼は使う方が,夜はつくる方の活性が高い)



(4)心理的な問題

 欲求不満が食事をとる行動に転換される



 子どもの過保護(子どもの精神的なストレスに対して食事で慰める)



(5)社会的な問題

 文明は肥満を増やし,文化は肥満を減らす



3)肥満の影響



(1)直接的な影響

 暑さに弱い(寒さには強い)

 呼吸への影響(肺での換気が少なくなりやすい)

 循環への影響(心臓の力を余分に必要とする)

 運動器への影響(体重による負担) など



(2)間接的な影響

 @いろんな成人病を悪くする一つの要因になると考えられている(確率の問題

  ですが)



 虚血性心疾患・・間接的に影響を与える



 高血圧・・・・・血のめぐりを維持するため高くなる



 糖尿病・・・・・肥満が関係していることが多い



 そのほか脂肪肝,痛風,胆石など



 A心理的な影響は大きい





4)健康のための食習慣



(1)味覚のトレーニング

 食べ物そのものの味,うす味,いろんな味



(2)けじめ



(3)環境づくり



* これらの習慣づくりを行ってゆけば,成長に従って身長と体重の伸びのバラ

 ンスがとれてきます。また,将来肥満を予防する習慣を身につけることができます。





<ポイント>

* 見えない砂糖に注意する

 「勝手に冷蔵庫をあけさせない」よその家の冷蔵庫を勝手にあける子が増えています



* 食べ物で子どもの行動を誘導しない

 「○○をしたらケーキをあげる」○○とケーキは本来無関係



* 食べ物をご機嫌とりの手段にしない

 「口にものが入っていれば」泣かないだろうけど,あとで困ります



* 母親と他の家族(特に三世代家族)間の問題

 「お菓子で歓心を呼ぶ」のは,子どもの将来に責任の「ない」人がすること

 肥満児がやせても体力は落ちません。「欲しがるのに与えない」ということになる

 のですが,これは必要なことであって,決して「かわいそう」なことではありません。



* 運動習慣

 「歩く」「走る」など くせをつければ意外と手軽に運動ができます。

 球技などでは,知らないうちにかなりの運動量になります。もっとも,遊び相手の

問題もありますが。

 何か始めるのであれば,太った子どもが取り組みやすいものとしては,水泳がよい

ようですが・・・。要するに,この時期は運動習慣と基礎体力をつけることです。

一芸でもいいので,なにか運動能力に,自信がつけばよい。



<その他>

* 幼児のころはころころと太っていてかわいくても,そのまま太りつづけてゆけば,

小学校の中学年くらいになると運動能力や容姿に悩むようになり,思春期になると容

姿,運動能力や異性に対するコンプレックスを抱くようになります。この時期まで太

りつづけてしまった(「親」からみれば「太らせてしまった」)子どもは,これらの

コンプレックスを,長い時間をかけて「自分で」克服してゆくことになります。

 この場合,個人差があって,家族の態度や家族関係がわりと影響しますが,いずれ

にせよ,一般に,思春期以降は,肥満者はマイナスイメージで語られることが多いの

で,注意が必要です。要するに,子どもにとっては,自分の評価が180度変わるのです。



* 自立心を育てること。「自分のことは人がやってくれない」ということを「身を

もって」教えることが大切です。



* 食事以外に歓心をもてることを開発すること。肥満者は食事で自分を慰める傾向

があるといわれています。



* とはいえ,体型に関する中傷とか,「肥満は敵だ」というような態度を全面に出

すと,子どもへの心理的な影響が大きく,思春期以降に問題が起きる場合もあります。

この時期は習慣づけを中心に考えましょう。また,具体的な比較対象を出して「太っ

たらあんなになる」というような言い方はやめましょう。



* 生活環境にあわせた方法を考えましょう。たとえば,近くに遊び場がないとか,

交通量の多い道路沿いにすんでいる子どもに,一概に外で遊べという訳にもいきませ

ん。集合住宅にすんでいれば,家の中での運動は周りの迷惑になるのでできません。

こういう場合,どうしたらよいかを考えることも大切です。



* 普段の家族のライフスタイルを見直しましょう。車を使わなくてすむ場合はあり

ませんか?1kmくらいは歩けますし,2〜3kmくらいなら自転車に乗れますね。