■ 保健計画論

Copyright (C) 福永一郎 1995

保健計画論


−−−− 保健計画論 −−−−



棚の上に飾るためではない,仕事のための保健計画論を叙述しています。

どうぞご参照ください。



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                      香川県丸亀保健所 福永一郎

                      PDF01076@niftyserve.or.jp



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保健計画論を,不肖・元 公衆衛生行政学研究者 JINNTAが解説します。



1.保健計画とは



健康に関する計画です・・・なんのことかわからんですね,しかしその名の

通り健康度を向上させるための計画です。



2.PLAN−DO−SEE



計画の概念とは



「計画」というのはやりっぱなしではないということですね。



計画を立てるためには



まず,実態を観察し,評価する。評価の結果から,どのようなことが必要かを

見いだす(これをニード,ニーズなどと称することが多い)。(SEE)



ここで見いだされたものに関して,その対処方法を計画する(PLAN)



その計画に従って,実行する(DO)



という過程の中に位置づけられるものです。



実はこのPLAN−DO−SEEは公衆衛生関係者は保健活動の理論と思って

いますが,マーケティングの手法でもあります。私は文部省認定秘書技能検定

2級などというあまり役に立たない資格を持っていますが,そのテキストにも

マーケティング手法としてしっかりと載っています。



3.もう一つの計画の意味



計画づくりの過程により,関係者の合意と役割分担を得ることが出来,行政活

動への住民や関係専門家などの主体的参加を得るとともに,一種の契約的意味

も持っています。いずれにしても,地域で必要な課題を地域で取り組むとか,

住民の主体的参加を確保するという,公衆衛生の理念の実現,地方分権の確立

に必要なものであるといえましょう。



4.場機能について



場というものは要するに集うところということです。

ある地域があって,その中で何かするとしても,みんながバラバラに

やっていたのではもったいないですし,しかもだぶったり食い違った

りして混乱することもあります。

そのため,そのあたりを調整し,また,新たな関係を作ったり,意思

を形成し,役割分担するような場が提供されることが,計画を有効に

機能させるために歯有用です。このように,保健計画を考える上では,

関係する人が集まる場を提供することができればまずは順調なスタート

と言うことになります(実はこれは結構難しいのです)。





SEEのポイント

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

ところで,ニーズとは何を示すかはいろいろな言われ方をしていますが

結局これは,潜在的なものを明らかにしなければならないのですね。



たとえば,「こどもの耳の健診をしてほしい」という訴えがあったとし

ますと,実際,どの程度の耳の病気の有病率があったり,それに対する

医療状況とか保健事業はどのようなものがあるとか,啓発状況はどうか

などと言うことを評価し,総合的にこの訴えを評価してゆくとニーズが

明らかになってゆくわけですね。



訴えが無くとも,統計を拾ってみるとわかるもの

訴えと実際が違うもの



というものもしばしば存在します。





優先順位

 ̄ ̄ ̄ ̄

さて,ものごとを行うには,いっぺんには出来ません。やはり順番を決め

ないといけないのです。



総花的で何でもやるとかかれている計画書は,できた時点で棚に載せられ

てほこりをかぶるだけです。実践的な計画は,優先順位がないとできない

ものです。



2つのこと,たとえば母子保健事業上,「ことばの障害の発見」と「幼児

歯科保健指導」の必要性がニーズとしてあがってきているとします。しか

し,両方ともいっぺんには出来そうもありません。

「どちらを優先させるか」

などと言うことを決めなければなりません。



その際は,優先順位を決めねばなりませんが,誰がするのか ということ

も頭に入れながら考えてゆくのです。



たとえば(あくまでも例ですから)



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        ことばの相談           歯科保健指導

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対象は?    一部の幼児            全部の幼児



効果は?    発達障害の早期療育の効果     普遍的な啓発として

        という点ではきわめて大      いわゆる地道な効果



誰がする?   保健所に耳鼻科医とSTを呼ぶ   歯科医師会や歯科衛生士

                         会の協力を得る



どこがする?  公的機関でないと難しい      自主健診でも可能である



何が必要?   相談会場の設定          健診の利用あるいはイベント



お金はどれ   医師とSTの報償費        報償費あるいは委託契約のお金

くらいかかる?                  ボランタリーならいらない



実施可能性は? 専門家の交渉が必要        歯科医師会あるいは歯科

                         衛生士会がOKすれば即可能



代替方法?   聴覚言語療育機関が近くに     啓発活動の代替は難しい

        あれば情報提供で一部代替可

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で,この場合,たとえば



1)「ことばの健診」は,さらに実施可能性を調査し,当面は代替の方法を考える

2)「歯科保健指導」は,当面歯科衛生士会の協力を得て来年度から即,健診会場で

やってもらう



というような選択をするわけです。



しかし,この優先順位は,有効に機能させようとすれば,前前回の「場機能」が

働くかどうかが重要になります。





優先順位(2)

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

でも,こういう声が聞こえてきそうです

「優先順位ったって,上から予算が流れてくるものは否応なしにしなければ

ならない」



さて,これはよく見られる現象です。



で,結局,優先順位が高いものにはお金がない,はっきり言ってあんまし

優先順位が高そうにないものにお金がつく ということはよく見られる現象です。



どう,対処するのがよいでしょうか



現実的な問題として,上から来るもの,これはやらねばなりません



どうアレンジして,役に立てるかと言うことを考えて,本来の優先順位を

あげてゆく,ということが必要となります。いやいやであっても,やるこ

とで,隠れたニーズが発見されることもあります。



という風にプラス思考で考えてゆくことになりますね。



優先順位の高いものとジョイントさせるというウルトラCもあります。





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