飛行機が引き返すとき(国内編)
飛行機がちゃんと飛ばなかったり、出発空港へ引き返したりすることがある。なかなかに困る事態なのであるが、国内線、国際線ともにこれまでに何度か経験している。経験を積み重ねるうちに学習して、飛行機が引き返すときを想定し、リスクマネジメントをするようになってしまった。
運休になった経験は何度かあるが、一番困ったのは雪による羽田空港クローズである。このときは翌日早朝から予定が入っていたので、なんとか新幹線で帰った。
天候不良には飛行機より新幹線の方が強いが、瀬戸大橋は強風のリスクがある(今回は触れないが、鉄道の不通や運休も数知れず経験している)。台風シーズンや冬の移動は冷やものである。また、高松空港は霧で飛ばないことも多い。
東京でどうしても外せない用事があるときは前の日に行き、帰る日の翌日の予定は入れないようにする。前の日にたとえ飛行機が飛ばなくても、高松空港からなら、最終便運休決定後に速やかにJR高松駅に移動して、新幹線やサンライズ瀬戸号で行くこともできる(新幹線の場合は途中までしかいけないが、強風の瀬戸大橋と冬の関ヶ原越えにはリスクがあるので、本州へ上陸して、名古屋あたりまで行っておいた方が安全である)。
翌日あけておくのは、用事が長引いたりして乗り損ねる場合と、当日飛行機が引き返すことを想定してのことである。もっとも、翌日あけられないことも多々あり、その場合はドタキャン不可能な用事を入れないようには工夫する。しかし、これは私がフリーランスのような生活をしているからできることで、第一線臨床の多くの先生方にとっては難しい注文であろう。
用事が長引いたり、羽田までの道筋で何かがあったりして乗り損ねたり、逆に用事がさっさと終わって早く帰れる場合がある。その場合、安いチケットではキャンセルや変更の対応ができない。早く帰れる場合はあきらめてどこかで時間をつぶせばよいが、乗り損ねは多額のキャンセル料を払った上に、たいていは正規運賃で購入し直す羽目になる(正規運賃はオープンにするか、キャンセル料420円を払えば済む)。そういう事態も何度も経験しているので、かくて、正規運賃の利用者になってしまった。安いチケットを買うのは、高い確率で「乗り損ねない自信があるとき」だけである。
なお、羽田最終便が運休した場合は、品川20:37発の新幹線か、横浜22:24発のサンライズで帰ることができる。羽田−品川は京浜急行で25分、羽田−横浜間は京浜急行で所要30分である。
天候不良で着陸できない、というのはなかなか哀れなものである。私はこれを3年前の1月と12月に2回経験した。いずれも羽田−高松の最終便で、霧や雨での天候不良で着陸できなかったものであり、いずれも羽田空港に引き返した。
2時間ぐらい高松空港の上空をくるくるを飛び、断念して引き返すわけで、すぐそこまで来ているのに出発地に戻る、という哀れさがある。加えて天候不良の時は、代替のチケットをくれるだけなので、宿の手配や航空機の予約は自分でやらなければならない。最終便の時は羽田に引き返してくると22時は過ぎているから、東京に泊まって翌日帰るしかない。宿は、リストくらいは用意してくれるので、それを見ながら電話をかけるわけであるが、最終便だから満席とかであることも多く、数百人が一斉に宿探しをするわけであり、羽田空港の近所に泊まるならば、はやいもん勝ちの競争である。
最終便ではない場合とか、航空機をやりくりして回送するような場合は、羽田に引き返さず伊丹や関空に着陸する場合もあるらしい。この場合は、その空港から香川まで交通費をもらって自分で帰るか、バスを用意されるのだそうである。
さて、羽田に引き返されると、宿泊代が余分にかかり(天候不良の時の宿泊代は自分持ちである。整備不良など航空会社側の事情の場合は、用意してくれる)、翌朝の便に乗れるとは限らない。新幹線で帰る羽目になるかもしれない。そうなると、車を空港においていると、わざわざ取りに行かなければならないから悲惨である。
かくて、空港へ車で行くことは絶えて久しくなったのである。
(2008年 坂出市医師会雑誌に寄稿)
青森県立三沢航空科学館にて